「総合系ファームは結局、決まったソリューションに当てはめてくるだけ」「戦略ファームはゼロベースで考えるけど、総合系はソリューションありきだから薄っぺらい」。コンサル転職を考えている人と話していると、この手の言い回しに何度も出会いました。特に外資系事業会社や戦略ファームの選考も並行している候補者ほど、面接の逆質問やカジュアル面談でこのフレーズを口にする傾向がありました。

採用責任者として数百人規模の書類を見て、その中の相当数と実際に面接で話してきた立場から言うと、この言葉自体は間違っていません。総合系ファームは確かに、自社が持つメソドロジーやテンプレート、パッケージ製品と紐づいたソリューションを起点に提案を組み立てる場面が戦略ファームより多い。それは事実です。

ただ、この言葉を「だから総合系は思考の質が低い」という結論に直結させて語る候補者を見るたびに、正直なところ評価が下がっていました。それはこの業界の収益構造と、なぜソリューションが先に存在するのかという理由を理解していないサインだったからです。

組織が10名から100名規模に拡大していく過程では、採用チーム自体も「どういう人を通すべきか」の基準を何度も言語化し直す必要がありました。その中で繰り返し議論になったのが、まさにこの「業界の紋切り型フレーズをそのまま口にする候補者」をどう評価するかという論点でした。業界理解の深さを測る指標として、実はかなり有効なリトマス試験紙だったのです。

今日はこの「ソリューションありき」という言葉が採用の現場でどう受け止められていたか、そして転職活動でこの論点をどう扱うと危険で、どう扱うと評価されるのかを、実際に見てきたパターンをもとに書きます。

「ソリューションありき」という批判の中身

まず整理しておくと、候補者が言う「ソリューションありき」には、大きく分けて二つの意味が混ざっていました。一つは「提案の出発点が、顧客の固有の課題ではなく、自社が売りたい製品やパッケージである」という意味。もう一つは「思考プロセスとして、仮説構築よりも既存フレームワークへの当てはめが先に来る」という意味です。

前者は構造上の事実です。総合系ファームの収益の相当部分は、戦略立案そのものではなく、その後のシステム導入やBPO、運用保守といった実行フェーズから生まれます。だから提案の入り口に、自社が実装できるソリューション(SAPなのか、特定のクラウド基盤なのか、自社開発のプラットフォームなのか)が組み込まれているのは、ビジネスモデルとして当然のことです。

問題は後者です。「ソリューションが先にある」ことと「顧客の課題を見ずに当てはめる」ことは、まったく別の話なのに、多くの候補者がこの二つを同一視していました。

採用会議で見えていた、批判する側の理解不足

面接後の採用会議で、候補者の発言を振り返る中で「ソリューションありきの働き方はしたくない」という発言が出ると、必ず次の質問が出ました。「では、その候補者はソリューションが決まっている中で、どうやって顧客ごとの個別性を作り込むかを理解しているのか」。

実際に深掘りの質問をしてみると、多くの候補者はここで詰まりました。ソリューションという「型」がある中でこそ、要件定義やアーキテクチャ設計、チェンジマネジメントの部分に固有の思考が必要になるという構造を、言語化できていなかったのです。型がないところからゼロベースで考えるのと、型がある中で顧客に合わせて調整し尽くすのとでは、求められる能力の種類が違うだけで、どちらが浅いという話ではありません。

逆に評価が上がったのは、「総合系はソリューションドリブンだからこそ、実装可能性まで見据えた提案ができる。絵に描いた餅で終わらせない仕事に魅力を感じる」という言い方をした候補者でした。同じ事実を見ているのに、解釈の解像度がまったく違いました。

「ソリューションありき」を批判できる人より、「ソリューションありきの中で何が難しいか」を語れる人のほうが、圧倒的に採用側の印象に残ります。

この批判をする候補者に共通していた3つのパターン

採用会議の議事録を振り返ると、「ソリューションありき」批判をする候補者には共通する背景がありました。

  • 戦略ファームの選考情報だけを頼りに、総合系ファームを比較対象としてしか調べていない
  • 事業会社出身で、コンサル業界全体を「戦略立案業」という一枚岩のイメージで捉えている
  • 実際に総合系ファームの案件がどこまでのスコープを持つか(戦略から実装、運用まで)を調べずに、初期のプレゼン資料だけを見て判断している

いずれも、業界研究の深さの問題であって、思考力そのものの問題ではありません。ただし面接という短時間の場では、この解像度の低さがそのまま「この人は業界理解が浅い」という評価に変換されてしまいます。採用側は候補者の地頭を測っているようで、実際には情報収集の姿勢と誠実さを測っている場面が多いのです。

特に印象に残っているのは、複数のファームを併願している候補者に「なぜ戦略ファームではなく総合系を志望するのか」と聞いたときの回答の分かれ方です。ある候補者は「戦略ファームは通過が難しいから併願している」という趣旨の答えに終始し、別の候補者は「戦略提言だけで終わらず、実行フェーズまで責任を持てる環境に価値を感じる」と、総合系ファームの構造そのものを志望理由に転換していました。後者のような候補者は、内定後の入社意欲の高さも一貫して高い傾向にありました。志望動機の強度は、業界構造への理解の深さと比例していたのです。

ファームによって「順序」は本当に違う

とはいえ、ここで公平を期すために言っておくと、ファームごとの差は実在します。戦略ファームは基本的にクライアントの経営課題からスタートし、打ち手は都度ゼロから設計します。一方、総合系ファームの中でも、テクノロジー導入色の強い部署ほど、ソリューションが先に決まっていることが多く、戦略色の強いユニット(いわゆる総合系の中の戦略部隊)は、戦略ファームに近い進め方をします。

この違いを候補者が正確に理解し、「自分はどちらの思考プロセスに向いているか」という軸で志望動機を語れると、面接官としては非常に話しやすくなります。逆に、ファーム全体をひとくくりにして「ソリューションありきだから」と切って捨てる発言は、その候補者がまだ業界を解像度高く見られていない証拠として受け取られていました。

さらに言えば、同じ総合系ファームの中でも、案件やクライアント業界によって「ソリューション先行の度合い」は大きく変わります。老朽化したレガシーシステムの刷新案件であれば、最初から採用パッケージがほぼ確定していることも多い一方、新規事業の立ち上げ支援や業界特化型のコンサルティングユニットでは、戦略ファームと変わらない仮説構築プロセスを踏むこともあります。この粒度まで語れる候補者は、選考が進むにつれて評価が積み上がっていく傾向がありました。

転職活動でこの論点をどう扱うべきか

選考の場でこのテーマに触れるなら、批判ではなく構造理解として語ることをお勧めします。「総合系ファームは実装まで見据えているからこそ、提案段階から実現可能性を検証する力が求められる。その制約の中で顧客固有の価値をどう作るかに興味がある」という言い方は、ネガティブな批判語りより格段に評価されます。

また、志望するファームや部署が実際にどこまでのスコープを扱っているのか、案件事例やOB・OG訪問を通じて具体的に調べておくことも重要です。「ソリューションありき」という言葉を安易に使う前に、そのソリューションが生まれる収益構造とビジネスモデルを理解しているかどうかで、面接での説得力は大きく変わります。

結局のところ、この論点で問われているのは業界への解像度です。世間で流通しているラベルをそのまま口にするか、自分なりに検証した上で語るか。採用側はその差を、驚くほど正確に見分けています。